降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

「悪かった」

「桐生さん、違うよ。それは違います」


私に何かある度に、こうやって桐生さんを傷つけちゃうのかな……。


「悪いっ……」

「桐生さん!!」


私が大きな声を出すと、桐生さんは驚いた顔をしていた。


「謝らなきゃいけないのは私の方です」


私に何かある度に、そうやって罪悪感を抱いてしまう貴方を私は──好きになってしまったから。

だから、謝らなきゃいけないのは私の方。


「桐生さん……私、桐生さんのことが好っ……!?」


桐生さんの大きな手が、私の口を塞いだ。


「悪い、梓。月城さんからは許可を得てる。俺ん家に来てくれるか」


私がコクコクと頷くと、ゆっくり手を離して、そのまま私の手を取った桐生さん。


──── 桐生さん家の玄関に入った途端、後ろからフワッと包み込むように抱きしめられた。


「梓……お前が欲しい」


ギュッと強く私を抱きしめて、ちょっとだけ不安そうな声でそう言った桐生さん。


「後悔させるかもしれねぇし、安全の保証なんて何処にもねえ。完全に俺の我が儘でしかねぇけど……それでも俺は……梓が欲しい」


──── この先、何が起こるかなんて分からない。それでも私は、桐生さんと一緒にいたい……これからもずっと。