降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

──── お母さん。その女子高生みたいなノリ、何とかならないの?……いや、なるわけがないか。元々こういう人だし……。


そんなこんなで女子会が始まって、オールするはめになったのは言うまでもない。


「美冬、付き合わせてごめんね?バイト大丈夫?」

「余裕。オールとか慣れてるし、雫さんとワイワイすんの好きだし。んじゃ、行ってくるわ」

「うん。気をつけてね」

「雫さんによろしく」

「は~い」


お酒を飲みすぎて、まだ爆睡中のお母さん。

すると、ピンポーンッとインターフォンが鳴った。

美冬かな?忘れ物……?

モニターを確認すると、そこに立っていたのは桐生さんだった。

慌てて玄関を開けると、私の顔をジーッと見て、頬に手を添えてきた桐生さん。


「眠れなかったか」


そう言って、何故か辛そうな表情をしている。

確かに眠れなかったよ……女子会が盛り上がっちゃって。


「まあ……はい……」

「悪かった」

「え?」


いやいや、桐生さんは関係ないでしょ。なんで謝るの?


「俺がお前を巻き込んだ」

「いやいや、桐生さんは関係ないですけど……」


桐生さんどうしちゃったんだろう……。


──── あ、忘れてた……あの出来事を。