降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

「お母さん。私……当たって砕けるから」

「いや、なんでフラれる前提なんだよ」

「フフッ、フフフッ……ま、成功を祈るわ。……ということで、はい。ちょっと早いけど誕プレ~。美冬はかなりのフライングだけど、はい。誕プレ~」


お母さんは毎年、私の誕生日には居ない。どうしても仕事の都合がつけられないから。

だからこうして帰国した時に誕プレをくれる。


「あたしのはいいって言ってんのに……」

「なーに言ってるの!!アンタもうちの子同然でしょ!?」

「……ありがとう、雫さん。大切にするね」

「あーーもうっ!!可愛いっ!!」


美冬に抱きついて、美冬の頬に自身の頬をスリスリと擦り付けているお母さん。

美冬は“仕方ねえーな”と言わんばかりな顔をして、その行為を受け入れている。


「もぉ、お母さん……程々にしなよ……」

「ほら、梓もおいで!!」

「いいよ……」

「いいから!!ほら!!早く!!」

「もぉ……」


結局、私も美冬もスリスリされまくった。


「よぉぉしっ!!ようやく恋ばな解禁ね~!!いやぁ、してみたかったのよ~。娘達と恋ばなとか超エモくなーい!?」

「それを許さなかったの雫さんでしょ。いい加減にして欲しいわー」

「もぉーー、美冬ったら辛辣!!」