降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

私は男の腕に思いっきり噛み付いた。


「痛っ!!」


掴まれていた腕が解放され、その隙に走り出す。


「こんのクソアマがぁっ!!!!」


後ろでそう叫んでいる男。

私は振り向くことなく走った。

このまま美冬のバイト先へ……いや、それはダメ。美冬を巻き込むわけにはいかない。


──── 美冬……。


私は和菓子屋の手前にある路地裏に入って先を進み、上がる息を必死に抑えて物陰に身を隠した。

どうしよう。

焦ってこんな場所へ来ちゃったけど、ここに入るのを見られてたかもしれない。

逃げ場がっ……。


「み~つけた」

「ひっ!?」

「馬鹿だねえ、キミ」


胸ぐらを掴まれて、無理やり立たされると、ドンッ!!と壁に押し付けられ、手で口を塞がれた。


「んぐっっ……!?」

「桐生のお気に入りは、どんな味かなぁ?」

「んんっーー!!」

「なあ、あの桐生を虜にしちゃうスゲぇテクニックとかあんの~?オレにもシしてよ」


体をベタベタと触られて、それが気持ち悪くて仕方ない。

・・・・触んないで。桐生さん以外に触れられたくない、触らせたくない。