降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

通り過ぎようとした時、腕を強く掴まれた。


「オレさぁ、アイツのこと嫌いなんだよねー」

「離してください」

「ま、恨むならアイツを恨みな?後悔先に立たずってやつ」


──── 後悔……?


私は後悔なんてしてないし、しない。

こういうこともあるかもしれないって、そう思ってたし、これが桐生さんのせいではないってことも、ちゃんと分かってる……理解してる。

これが私の選んだ道、私自身が望んだ道なんだ。


・・・・覚悟はもうできてる。


「あの人に傘を貸すのは、この私」

「は?なに言ってんの?」

「……あの人に傘を貸すのはこの私なの!!」

「ハッ、意味分かんねえ~。そういうのどうでもいいからさぁ、ヤらせろよ」


瞳に光を宿さない、何も映そうとしない、ただ憎しみに支配されている……そんな目をして私を見る男。

ここで連れ去られたらきっと私は……。

想像するだけで体が震える。


「ククッ。いいね、その怯えた顔」

「は、なして……離してっ!!」


周りの人は見て見ぬふり。

誰も助けてくれない。


──── いや、違う……そうじゃない。私は“覚悟”を決めたんだ。周りに助けてもらおうなんて、そんな甘い考えじゃ、桐生さんの隣には立てない。