降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。



──── 土日は桐生さんに会うことはない。


この土日で気持ちを整理して、桐生さんへ想いを伝えたい。

でも、その前に美冬へ伝えなきゃいけない。

私の大切な親友だから。


「なによ、ボーッとして。美味しくないのー」

「え?ああ、ごめんごめん。めちゃくちゃ美味しい。ていうか、すんごく可愛い」

「でしょ?我ながら天才じゃね?って思ったわ」


──── 言えない。


美冬が大切だからこそ、言えない。


「天才だよ、美冬は。本当にセンスある」

「ははっ。褒めても何もねーよ。つーか、ぼちぼち時間」

「うん……そうだね。ご馳走様でした」

「ほいほい。気をつけて帰りなよ~」

「うん。またね」


和菓子屋から出て、心の中で“言いたい、言えない”の押し問答をしながら歩く。

結局、マンションへ帰ってきてしまった。


「……どうしよう」


テレビも観ず、スマホを構うこともせず、ソファーに座ってただ天井を眺めた。

時間も忘れ、美冬のことばかりを考えている。


・・・・怖い、どうしようなく怖い。

美冬を失うかもって思うと、寂しくて、悲しくて、辛くて、怖い。

美冬と離れたくなくて日本に残ったのも、男女交際が禁止されてて、それを破ったら海外行きなのも美冬は知ってる。