降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

──── “覚悟はできた”。


自分の感情から逃げんのも、ここで終わりだ。

・・・・手に入れる、必ず。


スマホを手に取り、木村に電話をかける。


【お疲れ様です。どうしました?こんな時間に】

【月城 雫にアポイントを取ってくれ】

【それはビジネス的なものですか?それとも、プライベート的なものですか?】

【両方だ】

【そうですか。分かりました】

【頼む】

【……誠さん。覚悟は】

【ああ、もうできてる】

【では、私達も全力でサポートしますよ。誠さんの“特別”は、私達にとっても“特別”ですから】


コイツらも巻き込むことになる。

それでも俺は、梓が欲しい。


【悪い】

【そこは『悪い』ではなく、『頼む』ですよ】


俺ひとりの力じゃ守りきれねえ時は必ずくる。

“俺だけの力で何からも守ってやる”……そんなことは口が裂けても言えねえ。


【梓を守ってくれ。頼む】

【御意】


木村の決意した声が、グッと胸をアツくする。

俺は木村達も、梓も、全部引っ括めて、この命を懸けて守り抜く。

この信念を曲げることはしねえ。

貫き通す、押し通す。


──── 覚悟はもう、できてんだ。