──── あん時……俺の感情は溢れ、歯止めなんざ一切利かなかった。
甘く、どこまでも甘く、何度も何度も欲しくなる。
体の芯から疼くあの感覚。
全身が熱を帯びて、どうしようもなく欲しくて、俺だけのモノになっちまえばいい……そう強く思った。
愛おしくて、愛おしくて、たまらない。
・・・・くれよ。お前の心も体も、全部俺に。
「チッ。何やってんだ」
俺の手を振り払って出ていった梓を、追いかけていいものか、俺には分からなかった。
「柄にもなく焦っちまったな……クソだせぇ」
──『ごめんなさい』って、どういう意味だよ。
「……完全にミスってんだろ、これ」
怖がらせちまったか?
嫌な思いさせちまったか?
・・・・梓。お前はどんな気持ちで、どんな思いで、俺のキスを受け入れたんだ。
梓の気持ちが一番大切で、梓の思いを第一に考えるのが大前提。
俺の気持ちも想いも、二の次であるのには変わりねえ。
──── だが、何よりも“俺の覚悟”がなきゃ意味ねえだろうが。
「……俺にできるか?“覚悟”っつーもんが」
いや、違ぇな。
「できるか?じゃねぇ……するんだよ」
もう後戻りはできねえ、いや……しねえ。



