降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

「桐生さん……」


私は桐生さんの瞳を見つめて、『あなたのことが好き』と心の中で呟いた。


「悪い。止められそうにねえ」

「止めないで」


──── 完全に酔ってる。


正常な判断がつかない。

この場の雰囲気と、お酒と、桐生さんに、ただただ酔いしれていた。

部屋には私達が唇を重ねる音が響いて、何度も何度も角度を変えながら互いに求め合う。


──── “禁断は蜜の味”……心も体も、甘く絆されていく。


「梓」

「桐生さん」


何度求め合ったか分からない。

唇が溶けて無くなっちゃうんじゃないかってほど、私達は口づけを交わし続けた。

どこまでも優しく、丁寧にキスをしてくれる桐生さん。時々、『大丈夫か?』って気にかけてくれて……“好き”が加速していく。

これが“禁断”ってことは、頭では理解している。

それでも、心が言うことを聞いてくれない。


── チュッと唇に触れるだけのキスを落として、額にも口づけをした桐生さんは、少し名残惜しそうにゆっくり私から離れる。


「送ってく」


私の頭を撫でて、ベッドから立ち上がった桐生さん。

冷静になればなるほど、お母さんや美冬への罪悪感がのし掛かってくる。


・・・・それでも私は、桐生さんのことがどうしようもなく好き。