降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

私がそう言うと、ほんの一瞬だけ少し目を大きくした桐生さん。


「……ああ」

「そうですか」


私は視線を落として、再び包丁を握った。

・・・・何を聞いてるんだろう、私。


──── え?


桐生さんの大きな手が、私が包丁を握っている手にそっと触れ、すっぽり覆って包み込む。


「やる」

「……?」

「俺がやる」

「……あ、ああ……いや、私がっ……」

「いい。いつもやってんだろ」

「……ありがとうございます」

「ん」


──── 触れられた手がアツくて、心臓が飛び出ちゃうんじゃないかってほどドキドキして、トキメキが止まらない。


桐生さんにこの想いが伝わることも、届くこともないんだろうな──。


それから桐生さんの手際よさに圧倒されながら、少しモヤモヤを残しつつ、謎なメンツでのタコパが始まった。


「旨いか?」

「はい!めちゃくちゃ美味しいです!」

「いやぁ、梓ちゃんって何をしてても可愛いね。食べてる姿に癒されるよ」

「オメェは黙って食ってろ」

「ははっ。誠も思ったことや考えていることは、ちゃんと“言葉”にしないと伝わんないよ~?」


なんて言った不破さんの口に、大量のたこ焼きを突っ込み始めた桐生さん。