降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

ていうか、桐生さん遅くない?

・・・・紗英子……さんって、桐生さんのなんなんだろう。

モヤモヤが募っていく。


「……あの、不破さん」

「ん?」

「不破さんも……ヤクザですか?」


包丁を止めて不破さん見ると、ニコッと笑っていた。


「ううん。僕はただの一般人」

「そうですか。すみません」

「僕の方がいいじゃないかな」

「……え?」

「好きになるなら、僕の方がいいんじゃないかな?」


──── 何を言ってるの……?不破さん。


「いや……何を言ってるんですか……」

「だって誠は裏社会を生きる人間だよ?しかも、“ただのヤクザ”とは違う。誠はさ、格が違うんだよ。そんじょそこら奴とはさ。だから、好きになっても辛い思いするだけだよ?」


グラグラ揺らぐ私の瞳を真っ直ぐ捉える不破さんに、きっと動揺が全く隠せていない。


「別に、そんなんじゃっ……」

「梓ちゃんくらいの年代ってさ、“大人の男がいい”みたいな時期じゃないかな?だったらさ、僕でもいいんじゃない?」


──── 違う……そんなの違う。


誰でもいいわけじゃない。

私は桐生さんのことが────。