降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

「梓ちゃん大丈夫?誠に変なことされなかった?」


なんて言ってニヤニヤしている不破さん。


「痛っ!!」


そんな不破さんの後頭部を、通りすぎ様に無言で殴る桐生さん。


「ははは……大丈夫です」


苦笑いの私。

・・・・にしても、うちとは雰囲気がガラッと違うなぁ。

必要最低限の物しかないって感じだけど、めちゃくちゃオシャレって感じで、何より全てが高級感に溢れている。


──── 桐生さんって普通のヤクザ……とは違うよね、おそらく。


有名な極道一家……的な感じなのかな。


・・・・はは。身分差半端ない。


考えれば考えるほど釣り合うはずもなくて、ここまで釣り合ってないと逆に清々しいよね。


なんて思っていたら、キッチンに置いてあるスマホがヴーン、ヴーンと振動して音が鳴る。

私の視界に入ったのは着信画面で、“紗英子”の三文字だった。


「悪い」


その一言だけ残し、スマホを持ってリビングから去った桐生さん。


「仕事の電話かなぁ?」

「……さぁ」

「まっ、僕達で準備進めようか」

「そうですね」


それから不破さんと他愛もない会話をしながら、タコパの準備を進めていた。

一向に戻ってこない桐生さん。