降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

・・・・不破さんもヤクザ……なのかな?


「ははっ。らしくないねぇ?あんな連中を相手にするなんてさ」

「してねえ」

「くくっ。怒ってたくせに」

「黙れ」


スッと私を歩道側にして、腰から手を離した桐生さん。


──── 桐生さんの手が離れると、ちょっとだけ……寂しかったりする。


って、そんなこと言ってる場合じゃない!!


「あのっ、桐生さん」

「ん?」


さっきのただならぬプレッシャーはどこへやら。いつも通りの真顔な桐生さん。


「すみません。私のせいで」

「何がだ」

「……パパ活……なんて言われちゃって」

「俺のせいだ。悪かったな」

「いえ、そんなっ……」

「気ぃ悪くしたろ」


私を見る桐生さんの瞳が、どこか寂しそうに見えた。

まるで、『俺と一緒にいるからこうなるんだ』……そう責め立てているような──。

そう思ったら、どうしようもない憤りを感じた。

桐生さんは優しい。だから、人一倍苦しんでいるのかもしれない。


・・・・それなのに、さっきの人達はなんなの?


「私は!!桐生さんがパパ活をしてるって思われたことに、気を悪くしただけです!!私がどう思われてようが、そんなの……ぶっちゃけどうでもいい!!なんなの!?あの人達!!めちゃくちゃ失礼すぎる!!信じらんない!!私、ちょっと言い返してきます!!」