こ、断れなかった…。

 ずぅぅぅん、と沈んだ気分で北条くんの隣を慣れないローファーで歩く。

 ダメ?と聞いてくる北条くんを置いていくのは至難の業だ。できるという人がいるならばここを代わってほしい。

 駅から徒歩10分。残りの道のりが、地獄のように永遠に感じられてしまう。

 明日からは少し電車の時間を早めよう。それがお互いのために違いない。

 「小野寺さんってさ、部活とか決めてるの?」
 「ていうか小野寺ってなんでこの高校にしたの?」
 「髪切ったよね、似合ってるよ。」

 …ノンストップお喋り。北条くんって、こんなキャラだったっけ…?

 「北条くんって、こんな感じでしたっけ?
 なんか自分で話すところ見たことない、と言いますか…。」

 そう。私の北条くんに対して抱いていた印象は、どちらかというと話すより聞く姿のほうが強い。

 北条くんの笑顔、がちょっと困った笑顔、に変わっていく。