今日から、ようやく夢の高校生活が始まる。

朝、緊張して早く目が覚めてしまった私、小野寺茜(おのでら あかね)は大きく伸びをした。

中学生までの私は、それはそれは地味だった。

最初、周りの子がみんなお洒落にキラキラしていくのに追いつけなくて、今更やっても…という気持ちが地味さを後押ししていたのだ。

おかげで中学では、いじめ、とまではいかなくともあんまり仲の良い子もいなかったし、楽しかった思い出は特に、無い。

でも──。

私は、ぐっとこぶしを握りこんだ。

そんな生活も、もう終わりだ。

長い春休みの間、私は必死に自分磨きに取り組んだ。

分厚かった眼鏡とお別れし、コンタクトに。

髪もバッサリと切って、もともと腰まであったものを肩の少し上くらいまでに。

ダイエットも頑張ったし、メイクの練習もいっぱいした。

もう生まれ変わったも同然。怖がることなんて何もない。

バッ、とベットから起き上がり、顔を洗いに行く。

鏡に写った自分は、今まで生きてきたどんなときよりも輝いているような気がした。

自分の顔が格段にいいとは思わない。でも、今までに比べれば何倍もマシだ。

パシャ、と冷たい水が心地よい。

すぅ、と息を吸って、大きく叫んだ。

「よぉーし、今日から頑張るぞー!」

「姉ちゃん朝からうるさい。」

…頑張る、ぞ。