図書室ピエロの噂


 夏休みが終わった。終わってしまった……。
 ぼくはなんとか宿題を終えて、学校に向かった。久しぶりの学校は、少し小さく見えた。ぼくの背が、ちょっと伸びたからだと思う。始業式があって、その後、教室で席替えなどが行われる時間が来た。

 かねがなると、泰我先生が入ってきた。

「よーし、みんなそろってるか?」
「はーい!」

 西くんが元気に返事をすると、ぼくを含めたほかのみんなも返事をした。

「まずは、転校生を紹介する!」

 突然のことに、ぼくは扉に視線を向ける。

「入れ」

 泰我先生の言葉に、扉を開けて、少年が入ってきた。銀と金の間に見える紙の色をしていて、目の色は黒い。右のほほに黒いスペード、左のほほに赤いハートのペイントがしてある。ぼくの小学校は服装が自由だけど、ちょっと個性的だ。まるで哀名のカードの模様みたいだ。ただ、前髪が長くてあんまり顔が見えないけど、ちらっと見えたかぎり、とても整った顔をしていた。

道家紫(どうけゆかり)くんだ。みんなよろしくな。ほら、道家、挨拶!」
「……よろしくお願いします」

 ボソっと道家くんが言った。
 すると西くんが拍手を始めた。ぼくも真似した。

「よし、次に席替えをするぞ!」

 こうしてくじ引きが行われた。ぼくの左側は道家くん、前が哀名になった。
 哀名と前後というのは、幸先がいい。

「何か分からないことがあったら、聞いて」

 ぼくが道家くんに声をかけると、ボソっとした声が返ってきた。

「もとからそのつもりだよ。ボクは」
「え?」
「キミがボクに、外に出て来いって言ったんだからね? ちゃんと約束守ってよ」

 どこかで聞いたことがあるその声に、ぼくはすぐに悟った。

「図書室ピエロ……?」

 ぼくがぼく達だけにしか聞こえない声で尋ねると、楽しそうに道家くんがくちびるのりょうはじを持ち上げた。

「キミが学校で遊ぼうって行ったんじゃないか。来てあげたんだよ」
「うん、待ってたよ」

 ぼく達は、それから二人でひそひそと笑い合った。