夏休みも終わりに近づいた頃、ぼくの家に水間さんがやってきた。
亮にいちゃんと二人で出迎えると、今までとは違い、眉間にシワもなく、優しい顔をした水間さんが、家の中に入ってきた。
「よかったらこれを」
そう言って差し出されたクッキーの缶を見て、ぼくは食べるのが楽しみになった。
亮にいちゃんがお茶をいれてくれた。
「本当にありがとう。礼を言う」
「ううん。歩夢くんは、元気?」
「ああ。元気にしている。だんだん、今の環境にも慣れてきたようで、少ししたらまた小学三年生になる。俺の小六でとまっていた時計もやっと動き出しそうだ。瑛のおかげだ。本当にありがとう」
深々と水間さんが頭を下げた。ぼくはふるふると首を振る。
「ううん。ぼくは水間さんが心配してるのを見てたから、色々と決められたし、頑張れたんだよ。だから、ぼく一人の力じゃないよ」
ぼくの言葉に目を丸くしてから、水間さんが優しく笑った。
「あれぇ? お客さん?」
するとそこに、ひょいと透くんが顔を出した。ぼく達の失踪事件で探すお手伝いをしてくれたのが縁とのことで、ちょくちょく透くんは遊びに来ては、亮にいちゃんの部屋でダラダラするようになった。大学生はひまらしいとぼくは覚えた。
「ああ、水間さん」
「――どうも」
会釈し合った二人は、多分ぼく達を探すときに顔を合わせたのだろう。
「あのね、ぼく今日はこれから、約束があるからそろそろ出かけるね」
ぼくの言葉に、三人が顔を見合わせた。
そしてみんな笑顔になった。
「気をつけてな。哀名ちゃんによろしく」
「う、うん!」
昨日うっかり亮にいちゃんに、哀名と今日遊ぶと話してしまったのを後悔した。透くんがニヤニヤと笑いはじめる。
「ああ、彼女にもお礼を伝えてくれ」
「はい!」
水間さんの言葉に頷いて、ぼくは立ち上がる。そして玄関に向かった。
待ち合わせ場所まで、自転車で向かう。
今日は、ぼくと水間さんが最初に待ち合わせをした公園で、一緒に話すことになっている。ぼくが公園の駐輪所に自転車をとめると、ブランコに座っている哀名が見えた。
「哀名! ご、ごめん。待たせた?」
「ううん。時間ぴったり」
哀名はぼくを見ると、小さく笑った。前期の頃がうそみたいに、哀名はだんだん笑うようになってきた。その度に、見とれてしまうから、ぼくは困っている。
「メッセージで聞いたけど、ちゃんと口から聞かせて。図書室ピエロとお友達になったんでしょう?」
「うん、そうなんだよ。それでね――」
そのようにして、夏休みの期間は過ぎていき、ぼくは結局最終日付近に宿題に追われることとなった。

