図書室ピエロの噂

「ねぇ……本当にいいのかな?」

 一緒に歩きながら、ぼくは哀名に聞いた。すると哀名は視線を床にむけた。まつげが長い。かみの毛のリボンがゆれている。

「私だって、お手伝いしたい。でも、迷惑になったらダメよ」
「それは、そうだけど……」
「なにかほかにできることを、探しましょう」
「そうだね」

 うなずいたが、なんとなくむねのところがモヤモヤした。
 二人でならんで、通学路を歩く。哀名のお (うち)も、ぼくのマンションと同じ方角みたいだ。そうして歩いていると、神社の石段が見えてきた。

「あれー? 本当にデートだったんだ?」

 そこには透くんが立っていた。

「ち、ちがうよ!」
「……だれ?」

 ぼくが大きな声を出すと、哀名がぼくを見た。

「透くん。ここでよく会うんだ。友だちだよ」
「あ、俺のこと友だちだと思ってくれてたんだ、嬉しいよ」
「ちょっとイジワルだから、哀名も気をつけてね」
「……ええ」

 哀名がうなずいたので、ぼくはほっとした。

「イジワルだなんて〝しんがい〟だなぁ。それで? 二人はどこに行ってきたの?」
「学校だよ。図書室」
「ふぅん。お勉強デート? 偉いねぇ」
「だ、だから! デートじゃないよ!」
「照れるな照れるな」

 ぼくは照れくささと透くんに対しておこったせいの二つの理由で、真っ赤になった。
 すると哀名が咳をして見せた。

「私たちがかりにデートをしていたら、あなたに関係があるの?」
「友だちの瑛にカノジョができたら、お祝いしないとね。友だちだから」

 いたずらっぽくそう言って笑うと、透くんが立ち上がり、ぼく達の前に立った。

「遅くなる前に帰るんだよ。亮にいちゃんも心配するだろうしね。またね」

 そして透くんは帰っていった。ぼくがにらむようにして見送っていると、哀名が大きく息をついた。

「個性的な人ね」
「個性的?」
「……変わってるって意味」

 哀名がそう言うと歩きはじめたので、ぼくも一緒に歩いた。