図書室ピエロの噂

 翌日の土曜日。

 ぼくは朝からリビングで宿題をしていた。勉強は好きじゃないけど、宿題をいやがるなんて子どもみたいだから、ぼくは必ずていしゅつする。りっぱな大人になるためには、このていど、しっかりとこなさなければならないとぼくは思う。何度か麦茶をおかわりしながら、算数の問題をとき、たまに時計を見た。天井のそばにかかっている丸い時計だ。

 亮にいちゃんはもうアルバイトに出かけた。
 朝早くに帰ってきたお父さんは、今もねむっている。
 お昼ご飯は、ぼく一人で、昨日の残りのカレーを、レンジで温めて食べた。

 そうしていると夕方の四時が迫っていた。
 玄関へむかい、スニーカーを履いていると、お父さんがねる部屋から出てきた。

「出かけるのか?」
「うん、ちょっと学校の図書室に行ってくる」
「勉強熱心でえらいなぁ」

 お父さんはぼくが本を借りに行くと信じてるみたいだ。〝ウワサ〟をたしかめに行くなんてわざわざ伝えることはない。ぼくは大きく二度頷く。お父さんに手を振り、マンションの外へと出て、ぼくはは自転車置き場に行く。

 小学校までは自転車で五分ほどだ。ふだんの通学は徒歩だけど。小学生は歩いて学校に行くと決まっている。中学生になれば自転車で学校に行ってもいいそうだ。。

 第二校舎の三階にある図書室は、土曜日と日曜日も開いている。自転車置き場に自転車をとめて、校舎の中に入ると、廊下にはだれもいなかった。みんなあんまり図書室にいかないし、先生も鍵の開け閉めをするだけだから、三階までのぼる間、ぼくは誰ともすれ違わなかった。

 静かに図書室の扉を開ける。
 最初は首だけで中をのぞいたけど、ほと気はない。
 どうせ馬鹿馬鹿しいウワサだったんだ、やっぱり。そう思いながら、向かいの校舎や校庭から見える位置を目指して進んでみる。夏荻くんが見た場所だ。理科の図鑑の棚のそばで、壁には大きな鏡があるところだと思う。

「ひっ!」

 ぼくは声を上げて硬直した。
 鏡の前に、くすんだ緑の上着をはおり、白いマスクを口につけた、黒いフレームのメガネをかけた男が立っていたからだ。鏡を睨みつけている。黒い短髪の男の服は学校の先生達には見えなかった。

 ウワサは本当だった。
 ぼくは、ふるえた。