ぼくは深呼吸をした。深く息を吸ってはいた。
それからつばを飲み込んで、大きな本の表紙をひらく。
『読むな、すぐに閉じよ』
1ページ目には、そう書かれていた。
ドキリとしたけれど、ぼくは2ページ目を開く。
それから3ページ、4ページと、なにも書いていなかった。
白い紙をめくって、5ページ目になったとき、再び文字が現れた。
『ここでやめろ。先に進むな』
ドクンドクンと心臓がうるさくなった。耳に心臓がくっついちゃった気分だ。
だけどぼくが止めたら、手がかりは見つからない。
意を決して、次のページをめくる。
すると、ものがたりがはじまった。
『
ぼくは、大人だ。それは、当然のことだ。
もう小学六年生。
子どもじみた〝ウワサ〟なんか、僕は信じない。もう小学五年生なのに、信じるやつは、どうかしてる。
』
まるでぼくみたいな考えの登場人物だなと思った。
『
ぼくの胸の中がもやもやとする。
ぼくだって欲しいのに。
だけどみんなの〝一番〟は弟だ。ぼくは弟がうらやましい。ただ、そこでワガママを言ったりはしない。だって病気の弟にしっとするなんて、それこそ〝子ども〟だ。
ただ弟がいないとき、ぼくは勝った気分になってしまう。
』
ぼくの心がギュッとしめつけられた。大きく目を開き、本をじっと見る。この登場人物は、ぼくにそっくりだ。だけど、こうやって見ると、本当に――最低だ。
『
ぼくは初恋の女の子を、みんなから浮かないように、遠巻きにしている。
』
本当に最低だ。哀名はこんなにもいい子なのに。
ぼくって、こんなにみにくかったのか……。
ぼくは、ただの子どもだ。
『
正義の味方のミイラ男参上! みにくい臆病者は殺してやる!
』
その文字と、図書室で本を読む男の子とその後ろにいるミイラ男のさし絵を見たとき、ぼくは息をのんだ。後ろにだれかの気配がある。とっさに振り返ると、そこには包帯をグルグル巻きにしたミイラ男がいて、両手でぼくにおそいかかろうとしていた。
「うわぁあああ!!」
ぼくは叫んだ。恐怖で体がガクガクと震えた。

