シャッター通りは、昔はいっぱいお店が開いていたらしいのだけど、今はほとんどのお店げ閉店している。だからシャッターが降りていて、みんなに〝シャッター通り〟と呼ばれている。
角をまがってぼく達が進んでいくと、ほかに誰もいなかった。
――チリンチリン。
鈴の音がしたのはそのときで、ぼく達が顔を向けると、全身に包帯をグルグルに巻いた人が自転車に乗って走ってきた。そしてぼく達の前で、タイヤの音を立てて止まる。
顔は片目だけが見えていて、口のところも開いている。歯が黄色い。体の包帯からは、黒くべっとりとしたものが垂れている。見た目も怖くて、ぼくは思わず哀名の前に腕を出した。守ろうと思った。
「……」
すると哀名がびっくりしたようにぼくを見た。ぼくは照れくさくなった。
「おい、ト――」
そのとき、水間さんが、まだ声をかけられていないのに、トンカラトンに話しかけようとした。ぼくはあわてて腕の袖を引っ張る。そうしたらやっと思い出した様子で、水間さんが口を閉じた。
「トンカラトンといえ」
男の人の声だった。ニヤニヤしているように聞こえた。
「トンカラトン」
「トンカラトン」
「……トンカラトン」
無事にぼく達三人が答えると、トンカラトンが再びペダルに足をのせた。
「待ってくれ。聞きたいことがある」
改めて水間さんが声をかけた。トンカラトンが片方だけ見える目を大きくする。
「図書室ピエロの居場所を知らないか?」
水間さんの声は、今日も険しい。見守っていると、トンカラトンが瞳をぎょろぎょろと揺らしてから、口を笑顔の形にした。大きく口を開けると、紫色の舌が見えた。
「さぁねぇ。オレは詳しくないんでネ。鏡のことなら、ナナちゃんが詳しいだろうし。不吉な『4』の数字についてなら四次元ばばぁほど詳しいやつはいないネ。図書室についてなら、『読んではならない本』にヒントがあるかもしれないし、学校のことなら、そりゃあ花子さんが詳しいんじゃないカ? とにかくオレは知らないヨ。じゃあな!」
トンカラトンはそう言うと、自転車で走り去った。ぼくはぽかんとしたままそれを見送っていた。するととなりで水間さんがうでを組み、ためいきをついた。
「手がかりは得られたが、調べるのが難しいな。少なくとも俺には」
水間さんの声は、少ししずんでいた。

