一週間は長いようであっという間だった。
ぼくはその間、一度も哀名と話さなかったし、何度か見てしまったけど目もあわなかった。だから、本当に来るのかなって思いながら、ぼくは水間さんと約束をしている公園にいった。今日はランドセルを持っていないから、亮にいちゃんが不思議そうな顔をすることもなかった。
十時の少し前に公園につくと、水間さんがベンチに座っていた。
そして、哀名がブランコに座っていた。ぼくは交互に二人を見る。
先に立ち上がったのは、哀名だった。
「楠谷くん」
今日も、〝きふく〟のない声だ。一歩遅れて立ち上がろうとしていた水間さんが驚いた顔をしている。ぼくが立っていると、哀名が近づいてきた。
「紹介して?」
「あ、うん」
うなずいて、ぼくは水間さんにむかって歩く。哀名もついてきた。
「水間さん、あのね、クラスメイトの哀名」
「クラスメイト……? 一体、どうして?」
「トンカラトンの居場所を占ってくれたんだ。それで、一緒に、その……調べるのを手伝いたいって」
ぼくの言葉に、水間さんが困ったような顔をした。
すると哀名が前に出て、水間さんを見上げた。
「はじめまして。哀名詩織です。私にも都市伝説の調査を手伝わせてください」
「……子供のお遊びじゃないんだぞ? 危険が伴う」
「大丈夫です。不思議なことには、昔から慣れているから」
哀名が表情を変えずに断言したのを見ると、少ししてから水間さんがためいきをついた。
「それで? トンカラトンはどこにいるんだ?」
「あのね、きさらぎ駅の裏の方の、シャッター通りみたいなんだけど――水間さん、注意しなきゃならないことがあるんだって!」
「注意?」
「トンカラトンにあったら、『トンカラトンと言え』って言われるまで名前を言っちゃダメだし、そう言われたら、きちんと『トンカラトン』と言わないとダメなんだ。そうじゃないと、日本刀で切られて、新しいトンカラトンにされちゃうんだって!」
「それは知らなかった……覚えておく」
水間さんが立ち上がったので、ぼく達もついて行くことにした。

