環境が最悪なので推し活してたら推しから溺愛されることになりました

 撮影は驚くほど順調に進んでいった。
 カメラマンから言われた通りのポーズを取ったり、自分たちからポーズを提案したりと、実にスムーズに撮影をこなしていく。
 なんというか、『イケリウム』の三人には確固たる自信があり、それがいわゆるオーラとなってカメラマンを含むこの場の人たちを魅了しているのだ。
 とくに彼らはイケメンを売りにしているだけあって美意識も高い。
 どこを切り取っても絵になるとはこのことか、といった具合に、カメラマンも実に満足気だった。
「おつかれさまでーす」
 スタッフのその声で撮影が終わる。
 女性スタッフだけでなく男性スタッフも『イケリウム』に注目したり話しかけたりしている中、アクアだけは違った。
「美知華さーん!」
 ブンブンと手を振り、子犬のように美知華の方へと駆け寄ってくる。
 彼は配信中、どちらかといえば気品のある猫のような、ちょっとツンとした態度が多いキャラだというのに。
「あ、アクアくん……」
「美知華さん、撮影どうだった? 俺、ちゃんとかっこ良かった?」
「そ、そりゃあもちろん……」
 もちろんかっこいいに決まっている。しかも推しであるというバフがかかって、キラッキラに輝いて見えたぐらいだ。