「……ちょっと、まりか! 敷島がいるなんて聞いてない!」
わたしの腕を引っ張って耳元で言うなつきは、怒っているように見えるけど。
「だって言ってないもん。でも、うれしいでしょ?」
にしし、といたずらっぽく笑うと、ちいさく「……ありがと」と聞こえてきた。
この反応でわかると思うけど、なつきは律のことが好き。
小学生の頃からずーっと片想いしてる。
わたしの片想い歴といい勝負だ。
……律は鈍感だから、なにも気付いてなさそうだけど。
小学校の頃の仲良しメンバーは、わたしたちを含め八人と大所帯だった。
だけど、中学に入ってから新たに気の合う人をそれぞれ見つけたのか、いまでも同じように一緒にいるのはわたしと律となつきの三人くらい。
律は亮とよく一緒にいるけど、そこにわたしが加わることはなくなったし……。
わたしの恋はうまくいかなかったから、なつきはうまくいってほしいなって心から思うんだ。



