雨ノ弱

「……」
黙り込むわたしに黒崎はケラケラ笑いながら言う。
「大丈夫だよーっ!だってぼく元気だし?親が過保護で無理矢理通院して、学校行っちゃダメ!って」
親の真似をするように言う黒崎を無視して背中を向けた。
「…笑えないよ」
「え?」
「わたしは黒崎の持ってる病気がどんなものか、全然分からないし、奇病とかはじめて聞くけどそれでも笑えない。」
真剣な声色で話すわたしに黒崎も真剣になった。
大丈夫と言う人ほど気付いたら居なくなっている、とどこかで聞いたことがある。それは黒崎そのものだった。
「じゃあ、和泉がぼくを幸せにして?」
「は…?」
人生ではじめてこんな声を出した。
告白?告白…なのか?こんな状況で?どういうこと?
「ぼくの症状が発生するのは少なくとも次の流星群が流れる日でしょ?それまで和泉がぼくを楽しませて。幸せにして。それで…治療を手伝って」
「彼女に頼めば?」
「彼女なんているかーっ!友達も居ないのにっ」
彼女が居ないのは意外だ。
てっきり居るのかと。でも、友達も居ないのに彼女が出来るわけないか。
じゃあ、わたしが彼女の代わりにってこと?
わたしが治療を手伝いするしか無いのかな。
いつにもまして、さっきの何倍もの真剣な声で黒崎は言った。わたしへの頼み。誰かに頼られたのも、頼まれたのも、わたしに向き合ってくれたのも、黒崎がはじめてだった。
「分かった」
受けるつもりは少しも無かった。無かったけど、なんだか黒崎の誰かの幸せを手助けするのもたまには良いかなと思った。
ここから、この行動からわたしの何かが少しでも変わればいいと、そう思って。