『貴社が提出したデザインと、タカナシアーバンデザイン社の応募作が酷似しているため説明を求めたい』
 日時と場所が記載され、最後にコンペの主催者の住所と連絡先が書かれた書類に由紀の手が震えた。

「酷似って、」
 タカナシアーバンデザイン社は由紀が以前働いていた会社だ。
 つまり酷似しているのは、春馬のデザインと、だ。

「由紀、コンペに応募することを誰かに話したことはあるか?」
 律に言われた由紀は目を見開く。
 まさか、菜々美と凛?

「……あるんだな?」
「ランチで、……同期だった女の子二人に、」
 まさか、嘘でしょう?
 確かにあの二人にデザインを見せてしまった。
 だけど、どのコンペに出すって教えなかったし、見せただけ……じゃない。
 凛が写真を撮った!

「……うそ……」
 凛が春馬に見せたということ?
 友達だと思っていたのに……?

「大丈夫、あの作品は由紀が考えたものだ」
 青白い顔で震える由紀を律はグッと抱きしめる。

「偽物なんかに負けない」
 言い聞かせるように律は由紀の耳元で大丈夫だと繰り返した。