そして、嵐の夜がやってきた。
雷王対天邪鬼(あまのじゃく)の戦いが始まった。
それは、激しい戦いだった。
どちらとも譲らない。
でも、突如空気が氷着いたのがわかった。
ー……来る……ー
雨宮の周りだけが青黒く渦を巻いている。
これが……最凶最悪な雨宮くんなんだ。
我を忘れている。
今の雨宮くんは仲間か敵かわからない状態なんだ。
停めなきゃっ
私は、咄嗟に体が動いていた。
「雨宮くん!」
「やめろ!今の雨宮は誰の声も聞こえな……い」
雨宮くんは、私の声が聞こえているかのように動きを停めた。
いや、違う。
襲ってくるんだ。
それが、ゆっくりとスローモーションに見えるだけなんだ。
私、雨宮くんに殺されちゃうんだ。
好きな人になら殺されてもいい。
だが、だんだんと落ち着きを取り戻していくのがわかった。
雨宮くんが私の目の前に来た時、普通の雨宮くんに戻っていた。
「悪い、正気を失っていた。蒼空の声で我に帰ったよ。ありがとう」
仲間が、驚いている。
敵の人たちも。
「ふん、雨宮…大切な人を見つけたんだな」
床に倒れていた雷は、ゆっくりと立ち上がる。
「お前ら、動けるか。戻るぞ」
よろめきながら、雷は私たちに近づいた。
雷は雨宮くんの方じゃなく私を見た。
「頼んだぞ、雨宮の彼女」
そう言い残し、その場を後にしたのだった。
あれから、敵の人たちは姿を消したという噂を聞く。
後から聞いた話だけど、雨宮くんと雷は昔めちゃくちゃ仲が良かったらしく…
いつ日か、最悪な仲になったと聞いた。
そのとは、誰にもこの話には触れることはなかった。
今は、平和な生活を送っている。
雨宮くんは、相変わらず…アンニュイだな。
まぁ、その方が雨宮くんらしいけど。
❦ℯꫛᎴ❧