――婚約式の後四十日間の婚約提示期間を経て、アルフォンスの強い希望もあり、私はすぐに結婚式を行うこととなったのです。

「まあヴィオレット、とても綺麗よ」
「フォスティーヌ夫人、どうもありがとうございます」
「絶対に幸せになるのよ。貴女はマリーズに守られているのだから、大丈夫よね」
「はい。お母様や夫人、辺境伯様がいらっしゃいますから。私は大丈夫ですわ」

 花嫁の控室で、涙目のフォスティーヌ夫人が私のベールを下げてくださいました。

 あれからブラシュール伯爵家は爵位没収となり、領地は一旦国の預かりとなっております。
 私はブラシュール伯爵令嬢からモンジュ公爵令嬢となり……養女にしてくださったフォスティーヌ夫人は本物の母となったのです。

「すぐに結婚して平民となってしまうから寂しいけれど、それでも貴女を一時でも本物の娘にすることができて、とても幸せだったわ」

 そう言って笑うフォスティーヌ夫人は、花嫁である私よりもずっと美しかったのではないでしょうか。

 ――ステンドグラスが美しい教会。

 その前にある厳かな説教台の前で、私とアルフォンスは結婚いたしました。

 公爵令嬢と大商会の会長という二人にしては、随分と小さな結婚式だったと思いますわ。

 レオナール辺境伯様、フォスティーヌ公爵ご夫妻、あとは商会の主だった従業員たちに祝福されて、私とアルフォンスは夫婦となったのでございます。