「…っていうことがあったんだけど」
帰り道、もちろん家の最寄りも同じ(なんなら隣の家)なので2人で電車に揺られながら今日あったゆいくんのことを話していた。
「ふーん、そんで“ゆいくん”とか呼んじゃうんだ。へー、俺の知らないとこでふーん」
あ、一人称俺になった。
やばい、これはやばい合図。
幼馴染だからこそわかる…(?)
いつも温厚で穏やかで優しくてふわふわでかわいくて人懐っこい、「僕」こと世理。
でもこうして時々、ほんっとーにときどき機嫌を損ねて拗ねて拗ねレベルがMAXに近づくと「俺」こと強引わがまま世理になる。
おわった…と思ってなにが起きるか身構えていると、無言のまま電車に揺られるだけ。
え、逆に怖いんだけど…?
こんなに怖い無言の時間ある?え…?
そんなこんなで、最寄りについたのでとりあえず降りる。
横に世理があることを確認して、駅の改札を出た。
ぐいっ、
「あ」
顔と顔の距離間は約5cm。
無駄に整った顔が近くにある。

