「じゃ、僕は3組だから…」
「うんばいば、いっ?!」
教室の前について、私が2組の教室に入ろうとしたとき。
世理に手を振ろうと思って手を上げかけた右手をぐっと掴まれる。
…やられた。
春休みを挟んで久しぶりの登校だったから完全に油断してた。
瞬時に状況を飲み込んだ私はくるっと世理に背を向ける。
ぽすん、といつものように私の肩に世理の顔が埋もれた。
右手はまだ掴まれたまま。
「ここ、学校の廊下。わかるよね?」
バックハグ…とまではいかないけど、明らかに普通ではない状態になっている。
いつの間にか世理の方が私より10cmも高くなってしまった。私だって女子の方では高身長の方なのに。
この身長差がなければ…となんど悔やんだことか。
「んー充電」
「…3、2、1、終わり」
「あーっ!」
3つ数えて、勢いよく掴まれた手を振りほどく。
「いい加減やめてね?」
「…はあい」
少し強くいったらすぐに子犬みたいにしょぼん、としおれてとぼとぼと3組に入っていく。
…はあ、任務完了。
今朝も手強かった。

