「…はあ、これだから無自覚は困るんだよ」
「無自覚?」
「んーん、ほら授業始まるから」
なんだかよくわからないけど、教科書を貸してくれたのでまあよしとしよう。
「あ、教科書持ってる」
「そーそ!借りてきた」
教室に戻ると、珍しく真面目に予習していたゆいくんが話しかけてくる。
「…と、三園世理?」
借りてきた教科書の裏を見て、世理の名前を読み上げるゆいくん。
「うん、世理の」
「なるほどねえ、仲良いって言うのは知ってたけど教科書の貸し借りもするんだ」
「え?うん」
そっかあ、なるほど…となんだか記憶と照らし合わせているように見えるゆいくん。幼馴染ってことを知らないみんなには不思議でたまらないんだろう。
「俺が違うクラスだったら紗杷に貸したのに〜」
あ、なにそれ。チャラ男発言、チャラ男構文。『もし俺だったら』
「それはどうも」
ゆいくんのチャラ男発言にも慣れてきたので、軽く…いや、冷たく受け流す。

