…多分、見たことあるから世理のお友達だよねー

さっき飛ばされていたそうだったなぁ、と哀れな目を向ける。

「紗杷が僕の教室来るなんて珍し〜!もしかして僕に会いたくなっ」

「いや違う。数学の教科書貸して」

すぐさま誤解を生まないように否定すると、今日なんか冷たーいと言ってぷくっと口を膨らませる世理。

…かわいいとこあるんだからねー、

って、ついつい姉心が。

「えーどうしよっかなあ」

「え?貸してくれないとかあるの?
いつも私貸してるじゃん!」

ま、まさかのNG??!
ここは最終兵器を使うしかないかあ…

すぅっと大きく息を吸う。

「…お願いっ!」

顔の前で手を合わせて、上目遣いで世理の目を見つめる。

これが、今の私ができる最大限の“かわいい”です…

ほんと、勘弁して…無言長いよっ?!

時が止まったかのように、世理が停止する。