…春。
またあんたの顔と、桜を写す私の目。
「おはっよー紗杷!」
「…おはよ」
朝から元気いっぱいに私の腕にまとわりついてくるのは
「今日は一段とかわいいなー」
「もーう、誤解を招くから黙れる?」
幼馴染9年目に突入する、三園 世理。
そして、一緒に迎える9回目の始業式。
中学3年生の、幕開けです。
「なんでよー腕振り払わないくせにー」
「…ほどくの忘れてた」
よいしょ、と言っていつものように世理の腕をほどく。
世理が私にベタベタしてくるのを許すのは、学校の最寄駅に着くまで。
これは私立の中学校に入ってからのお決まりごと。
変な誤解されたくないし、言う必要もないから私たちが幼馴染というのを知ってる人はこの学校にいない。

