お願いだから、好きって言って。


 どうして、佐藤くんが図書室に?

 あまり図書室で過ごしているイメージがなく、想像ができなかった。

 ただ、さっきもそうだけど、佐藤くんは私みたいなカースト最下位の女子にも分け隔てなく接してくれる。


「あり、がとう……ございます」
「いーえ。って、なんで敬語?」

 クス、と佐藤くんは、くしゃりと目を細めて笑った。
 
 敬語じゃないと、気が気じゃなくて、言葉すら交わせないからです。なんて、気持ち悪いって思われそうだし……どう説明すれば……

 ただ、佐藤くんは通りかかったわけでもなんでもなく、私に用事があったのか、なかなか本を渡してはくれない。


「さっき、綾瀬から逃げたでしょ」
「え……?」
「アイツのこと、嫌い?」
「そんなわけ、ない……」


 不器用なりに本当の言葉を口にすると、佐藤くんは意外だと言いたげな表情でこちらをみつめた。

「じゃあなんでご飯一緒に食べなかったの?」


 突然佐藤くんの口から放たれた、予想だにしていなった質問に、わたしは驚き固まる。