「寒い……」
さっきまで蒸し暑くて汗だくになってたのに、山の雨は冷たく、急激に体温を冷やしていく。
はぁ、はぁ……と、乾いた浅い呼吸をしていると、嫌な予感が頭をよぎる。
ひゅっと、息が詰まる感覚。
上手く息ができない……苦しい。
なんでこんな時に……?
そうだ……走った後、急激に冷えたからだ……
喘息の薬、リュックに入れっぱなしだ……
あれだけ気にして荷造りしたのに……
必死に体を動かし、山小屋の屋根のあるベランダに倒れ込む。
ここならこれ以上濡れなくて済む。
相良さんの力に少しでもなりたかったのに、空回りして、こんなふうになって……
本当に私って、使えないやつだ……
息苦しいのは、喘息のせいだけじゃない。自分が足でまといだから……
浅い呼吸を繰り返し、気管支がきゅうっと締まる感覚に苦しむ。
どうしよう……だんだん意識が遠くなっていく。
うまく息が、できない……
「双葉さん……ッ!」
目が閉じるその瞬間、最後に視界に映ったのは、心配そうに駆け寄ってくる佐藤くんだった。


