「双葉サン! あたしここ座っていい?」
綾瀬さんはこちらに駆け寄ってくると、私の前の席を指さした。
えっと、ここの席の人とご飯食べるってことだよね……? ってことは、私……邪魔になるってこと、かな?
「ご、ごめん……」
私は、自分の荷物を急いで片付けると、早足で教室を出た。
どんな表情で、綾瀬さんが私を見ていたかなんて……気付きもせずに。
◇ ◆ ◇
やっぱり私は変われないまま。
だけど、綾瀬さんは私に邪魔って言わないで、やんわりと伝えてくれたし……とっても優しい人なのかも。
となると、やっぱり向かう先は図書室なわけで……
……結局中学の頃と何一つ変わらない。
教室で友達とお昼ご飯、食べてみたかったなぁ。
「はぁ……」
大きなため息をつきながら、背伸びをして気になっていた本に手を伸ばす。
「――これ?」
細長い指が重なり、その手は私が取ろうとした本をスッと掴んだ。
声のした方を見上げると、そこには……
――佐藤くんがいた。


