お願いだから、好きって言って。


 佐藤くんが教室へ戻ってくると、空気は一瞬でお祭りムードになる。


「さすが! モテ男は違うね〜!」
「は? 綾瀬だっる!」
「てか、佐藤って地元あっちの方なんだっけ?」
「あー……まぁ」


 佐藤くんはあまり詮索されたくないのか、気まずそうに目を逸らしてる。


「じゃあ同中の子とかいないの?」



 綾瀬さんの問いかけに、小さく肩が跳ねる。
 私、のこと……同じ中学って知らないのは分かってる……けど……何でこんなに鼓動が早くなって冷や汗がでるの?



 高校では、中学の頃のことは消して……何も知らなかったことにして過ごしたいのに……



「いないよ」



 佐藤くんの一言が、ざわめきをかき消して私の脳内へと入ってくる。



 やっぱり……私の存在なんて、佐藤くんは知らなかった。