お願いだから、好きって言って。



 溢れる涙を隠すように目をそらす私に、佐藤くんは申し訳なさそうに話を切り出す。



「俺に無理して好きって言わせて……泣かせてごめん……」



 どういう、こと……?
 無理して好きって言ったわけじゃない……いやで泣いたわけじゃない……


「雪崎が好きなの、分かってたけど……「ちがう……」



 これ以上勘違いされるのが怖くて、佐藤くんの言葉を思わず遮ってしまう。



 だけど、これだけは伝えなきゃ……本気だって……




「ほんとに、佐藤くんが好きなの……」




「雪崎くんのこと、友達としてしか見てない、私こそ……佐藤くんが相良さんのこと好きなの……知ってたのに……」



 ぎこちなくなりながらもそう伝えると、佐藤くんは困惑したような表情で、少しの間考え込む。


「え、あの……ごめんなさい……」

「いや、俺別に相良のこと好きじゃないんだけど。なんでそんな勘違いされてんの……?」



 佐藤くんの口から発された思わぬ言葉。
 
 え、でも……雪崎くんと好きな人が一緒だって……
 だって、雪崎くんの好きな人は絶対相良さんじゃ……


「雪崎くんが相良さんを好きだから……佐藤くんもそうなんだと思ってたんだけど……」
「はー?! 雪崎が好きなの、絶対双葉さんじゃん!」


 そんなわけないじゃん……
 行きのバスでも海でも……相良さんを誘ってたわけだし、そんなの一目瞭然だよ……


「ふふ、佐藤くんって……鈍感なんだね……」


 なんだか、そんな勘違いをしてる佐藤くんがおもしろくて、思わず笑みがこぼれる。


 そんな私を見て、佐藤くんは小さくため息をついた。