「あ、そういえば双葉さんさ……」
突然こちらに視線を向け、話しかけられる。
今は……佐藤くんと話せない。
ぐるぐると混乱する思考回路。
必死に理由を探し、慌てて口を開く。
「あっ、あの、急用……思い出したから、行ってくる……」
勢いよく立ち上がり、そのまま走って教室を出る。
我ながらバレバレで分かりやすすぎる嘘だったなって、少しだけ後悔する。
だけど、あのまま目を見て話すことなんてできない……
あの瞬間の、佐藤くんの表情……思い出してしまいそうになる。
ああ……溺れそう。
人を好きになるのって、こんなに辛くて苦しいんだ……
恋って、キラキラしてて楽しいものだと思ってた。
どうしてだろう……
どうして佐藤くんがいる時に限って、カッコ悪くなっちゃうのかな……
好きって気付いてから、素直になれなくなった。
前は自分の気持ちを言えてたのに。
今では嫌われないようにすることだけを考えている。


