不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?

「まず、その手始めとして、一つお願いしてもいいですか?」
「手始め、ですか? なるほど、そういうことなら、皆まで言う必要はありません」
「そうですか。それなら、よろしくお願いします」

 私がゆっくりと目を瞑ると、マグナード様がそっと口づけをしてきた。
 一瞬の触れ合いであったが、それだけで火が出そうな程に体は熱くなっていた。これでも色々な危機を乗り越えてきたつもりなのだが、かなり動揺してしまう。増してや、自分から提案したことであるというのに。

「……ふう」

 動揺しているのは、私だけではなかったらしい。目を開けてマグナード様の顔を見て、私はそのように思った。
 そこで私達は、ほとんど同時に噴き出した。恥ずかしさと幸福と、愛おしさが溢れ出してきて、もう笑うしかなかったのだ。
 それから私達は、二人で穏やかな時間を過ごした。きっとこれからも、私はマグナード様とそういう時間を過ごしていくだろう。