不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?

 それは時間にしてみれば、一瞬だったかもしれない。しかし、ロダルト様が動き出すのには充分過ぎる時間だったといえるだろう。
 ロダルト様は銀色に輝く刃を取り出した。彼はそのまま、こちらに向かってくる。
 理由などはわからないが、ロダルト様は私を狙っているようだ。もしかして、一連の事件は全て彼が引き起こしたものだというのだろうか。

 そんな風にともすれば呑気に考えている私の方に、ロダルト様は確実に近づいて来ていた。
 私の時間は、驚く程にゆっくりと流れている。しかし思考と違って、肉体は動いてくれない。長く感じる時間は、ただ自分が逃げられないということを悟るためのものでしかなかった。

「イルリア……君は僕のものだ!」
「……させるかっ!」