不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?

 エムリーが再び噂を流すことを、私は懸念していた。
 故にその噂を払拭できるように、対人関係には気を遣ったつもりだ。私という人間の本質を理解してもらうためにも、積極的に自分を見せてきた。
 しかし一向に、私を貶めるような噂は流れてこない。それ所か、以前よりも増して噂が沈静化しているくらいである。

「イルリア嬢――今日は早いですね」
「マグナード様、おはようございます。少し早起きしてしまったので」

 色々と気になることがあるためか、私はいつもより早く教室に来ていた。
 そんな私が挨拶を交わしているのは、マグナード・ビルドリム公爵令息だ。いつも穏和な笑みを浮かべる彼は、教室の黒板の掃除をしている。

「マグナード様も、早いですね?」
「ええ、今日は日直ですからね。せっかくですから、少し早く来て務めを果たそうと思いまして」
「ご立派ですね」