桜の花びらが散っていく姿が美しかった四月はあっという間に過ぎ、五月のゴールデンウィークが終わってしまった。長期休みが終わり、また学校に行って勉強をすることを苦痛に思う生徒もいるだろうが、彼女は違った。

「行って来ま〜す!」

ポニーテールを揺らし、今年黄前(おうまえ)中学校の一年生となった瀬戸明里(せとあかり)はまだ朝の七時半を過ぎたばかりだというのに家を出る。学校が遠いわけではない。彼女が住んでいる住宅街の目の前が学校のため、歩いて一分ほどで着く。

「明里、もう学校行くの?」

「うん!朝活しに行ってくる!」

洗濯物を干すために庭に出た母親に明里は元気よく答え、学校へと早足で向かう。下駄箱でスニーカーから学校指定のスリッパに履き替え、一年二組の教室へと向かう。一年生の教室は三階だ。

教室のドアを開けると、そこには当然まだ誰もいない。静まり返った朝の教室は、まるで別世界に迷い込んだかのように違う雰囲気を放っている。