ついに、春のステージ発表会当日の朝がやってきた。
今朝の校門周辺はいつも以上に物々しい雰囲気に包まれていて、持ち物検査の順番待ちの長い行列もできている。
「おじさん!」
見回り中の圭斗のお父さんを見つけて、わたしは駆け寄った。
「やあ。詩乃ちゃん、おはよう」
「おはようございます。あの……」
「ああ、みんなが学校に来る前に、もう一度くまなく探したけど、今のところ爆弾は見つかっていないよ」
「そうですか。よかったぁ。やっぱり、ただの脅しだったんですかねぇ」
「それは、終わるまでわからないね。とにかく、僕らも最善を尽くして警備にあたらせてもらうから、彼のことは頼んだよ」
「はい。お任せください!」
おじさんに向かって、ビシッと敬礼して見せる。
「うん。それじゃあ、またあとでね」
わたしにひらりと手を振ると、圭斗のお父さんは見回りを再開した。
警察官かぁ。
裏の忍びとは対照的に、表に立ってみんなの生活を守ってくれているのが、警察官だ。
結局おじさんは、忍びをやめても、みんなを守る存在であり続けたいって思ってくれたってことなんだよね。
お父さん。みんな、元気にがんばってるよ。だから、安心してね。
……はっ、いけない、いけない。もうすぐ南条くんが登校してくる時間だ。
こんなところで物思いにふけっている場合じゃない。
わたしは慌てて校門の方へと駆け戻った。