「ねえ、なんで断らなかったの? 完全に業務外だよね?」
わたしからお出かけの件の報告を聞きながら、トントントントンとリズミカルに圭斗が人差し指でダイニングテーブルを叩いている。
かなりイライラしてるみたい……。
わたしたちは今、任務のために大御門学園近くのマンションを借りて、二人暮らしをしているの。
共有スペースのリビングダイニングキッチンやトイレ、お風呂の他に、カギのかかる個室がそれぞれ一部屋ずつ。
圭斗が作った夕飯のカレーライスを食べながら「そういえばね」ってわたしが話しはじめた途端、圭斗の眉間に深い深いシワが刻まれた。
「で、でもね。南条くん、今まで友だちと出かけたこと、ないんだって。わたしがちゃんと南条くんのことは守るから。ねえ、おねがい。南条くんにも、楽しい思い出を作ってもらいたいの」
だって、さっきお出かけの話を聞いたときの南条くん、本当にすごくうれしそうだったんだもん。
言い方はそっけないのに、口元が緩むのを必死に我慢しているようにも見えた。
もちろん、あの高い塀に囲まれた学校の中とは比べものにならないくらい危険だってことはわかってる。
けど、せっかくわたしが南条くんのそばにいるんだから、わたしにできることがあれば、南条くんのためにしてあげたいよ。