一匹オオカミくんと、今日も、屋上で



手渡したお弁当を広げ、私の箸でお弁当を食す宝生くん。「うまっ」と言いながら食べてくれている。


「喧嘩でもした?」

「そういうのじゃないんだけど、恋愛がしたいって言ったら、友達が私に対してどう想ってたのかを知ってしまって。気まずくて……」

「恋愛してぇの?」

「私、お恥ずかしながら初恋もまだで。でも、友達の話は9割恋愛話だからついていけなくて……恋愛したら盛り上がれるかなって」


宝生くんは「へぇ」と相槌を打つなり、私に食べかけのお弁当を返した。


「半分残しといた」

「え、あ……ありがとう」


うちのお母さんはおかずは全て2個ずつ入れてくれる。だから1個ずつあるし、1段目に入っていたご飯もきっちり半分残っていた。


宝生くんなりの優しさだろう。


けれど、私の箸も宝生くんが口をつけてしまっている。


さすがにこの箸で食べるのは申し訳なくて、手でおかずを取ろうとしていると、宝生くんはまた口を挟んだ。


「俺、虫歯できたことねぇから。あっこが潔癖じゃないなら箸使って大丈夫だけど」

「あ、うん。じゃあ……いただきます」


断れずに宝生くんが口を付けた箸を使うことになってしまった。