一匹オオカミくんと、今日も、屋上で


「友達から『あっこ』って呼ばれてるだろ。だから白鳥の名前は覚えやすかった」


昼休みも休み時間も何処かへ消えてしまう宝生くん。それなのに、私が友達から「あっこ」と呼ばれていたことを知ってくれていた。


「わ、私も分かる。宝生くんの名前。宝生(ひびき)くん。名前、カッコイイから真っ先に覚えた」


恥じらいもなく告げると、宝生くんは「そりゃどうも」と欠伸をしながら寝転がった。同時に宝生くんのお腹がぐううっとなる


「………………」


「今の宝生くんのお腹だよ」


寝て誤魔化しているのて指摘すると、身体を起こした宝生くんは私の手元に視線を向けた。なので、お弁当を差し出し、


「これ、食べる?」


と宝生くんに聞いてみる。


「あっこは?」


違和感なく「あっこ」と、蘭から付けられたあだ名で呼ぶ宝生くん。


嬉しくて、恥ずかしくて、ドキドキしてしまった。


「私はお腹減ってなくて。最近友達と喋ってないし、一人でいるとカロリー消費しないから」


――しまった。聞きたくもないであろうことを、宝生くんに愚痴ってしまった。