一匹オオカミくんと、今日も、屋上で



「そんな怖い顔しなくていいよ。好きなんでしょ? 宝生くんのこと」

「…………え」

「毎日毎日嫌っていうほど目で追ってるの知ってたし、私はずっとあっこに話しかけたかったのにさ、あっこ、宝生くんに夢中でそれどころじゃないみたいだったし」


教室にいるのは私と蘭だけではない。他の子もいるんだ。
なのにお構いなしにベラベラと話す蘭の口を手で覆う。


「そ、そんなんじゃない!」


これ以上変なことを言いださないように、蘭も連れて旧校舎へとやってきた。

旧校舎の廊下は宝生くんが渡りやすいように片付けてくれたため、今ではガラスに怯えて通らなくても良くなった。けれど、蘭は衝撃的だったようで、「幽霊出るって。なんなの!?」と、屋上に着くまでの間終始怯えていた。


屋上に着くと、蘭を見た宝生くんは「げ」という顔をし、蘭に睨みを利かせていた。

「……コイツ、なに」

蘭のことを「コイツ」呼ばわりしながら、私に質問をする宝生くん。

蘭も宝生くんの表情を真似するかのように、宝生くんに対して怖い顔で睨みを利かせていた。