私は宝生くんにキスをされて全然嫌じゃなかった。
宝生くんの唇が私の口に触れて、とても心地がよかった。
ファーストキスといっていいのか分からないけれど、初めてのキスの味は無味だった。
今もまだ、宝生くんの唇の感触が残っている。もう一度触れたいと思う私はきっと、普通の女子のような乙女な思考ではない。
宝生くんは、私とのキスはどう思っただろうか。
想像していたキスと違っていたりしただろうか。幻滅してしまっただろうか。自分に自信がない私はどうしても悪い方へと考えてしまう。
◆
翌日から、昼休みになると屋上へ行ってしまう宝生くんの後を追い、一緒の時間を過ごす日が続いたとある日、
「あっこ。ちょっといい?」
いつものように宝生くんの後を追いかけようとした時、背後から蘭が話しかけてきた。
蘭とはあれっきり目も合わせていないし、話もしていない。一ヵ月振りに目も合って話かけられた。



