一匹オオカミくんと、今日も、屋上で



私は宝生くんにキスをされて全然嫌じゃなかった。

宝生くんの唇が私の口に触れて、とても心地がよかった。

ファーストキスといっていいのか分からないけれど、初めてのキスの味は無味だった。


今もまだ、宝生くんの唇の感触が残っている。もう一度触れたいと思う私はきっと、普通の女子のような乙女な思考ではない。


宝生くんは、私とのキスはどう思っただろうか。


想像していたキスと違っていたりしただろうか。幻滅してしまっただろうか。自分に自信がない私はどうしても悪い方へと考えてしまう。





翌日から、昼休みになると屋上へ行ってしまう宝生くんの後を追い、一緒の時間を過ごす日が続いたとある日、

「あっこ。ちょっといい?」

いつものように宝生くんの後を追いかけようとした時、背後から蘭が話しかけてきた。


蘭とはあれっきり目も合わせていないし、話もしていない。一ヵ月振りに目も合って話かけられた。