宝生くんはかっこいい。性格も、知れば知るほど抜け出せなくなる。
そういうことをしている女の子がいてもおかしくない。
目をぎゅっと瞑っていると、「ない」とそうであってほしかった言葉が返ってきた。
そして、次の瞬間、私の唇が柔らかい何かに触れた。
「――っ!?」
びっくりして目を開けると、宝生くんの顔がドアップで視界に入り込んだことから、唇に触れた『何か』は宝生くんの唇なんだと分かった。
「でも今『ある』に変わった」
「……なんで」
「そんな寂しそうな顔で誘う方が悪い」
「……宝生くんは寂しそうな顔してたら、誰にでもするの?」
「誰にでもするわけないだろ」
……じゃあなんで私にはしたの?
私はいつも、とても大切なことが聞けない。



